ドンクベットとは?ダメな理由やされた時の対策、有効な時を解説!

ポーカーをしているときに「それドンクベットだからやらない方が良いよ」と言ったような指摘を受けたことはないでしょうか?

その際、ドンクベットがダメな理由として、

  • ヒットしているのがバレるからダメ
  • レイズされると困るからダメ
  • 強いハンドでやると相手に降りられてしまうからダメ

などと言われたことがあるかと思います。しかし、それらの理由は本当に正しいのでしょうか。この記事ではドンクベットについて深く掘り下げていきます。

ドンクベットとは

そもそもドンクベットとは、前のストリートでコールしたにも関わらず先にベットすることを指します。ドンクベットは英語のdonkey(ロバの略)から由来し、バカなベットという意味で使われています。

初心者はドンクベットをしてはいけないのか

結論からお伝えすると、初心者はドンクベットをしない方が良いです。初心者が行うドンクベットレンジはかなりエクイティの高いハンドに偏っており、簡単にエクスプロイトされてしまいます。

ドンクベットを行える状況はいくつか実際にありますが、その状況でドンクベットをしなかったとしても失うEVはごく僅かです。

偏ったレンジでドンクベットしてしまうが故に失うEVの方がはるかに大きくなってしまいます。ただどうしてもドンクベットの戦略を学びたい方や、エクスプロイトとして機能するため取り入れていきたい方はこれから紹介するドンクベットが有効な時をご覧ください。

ドンクベットがダメな理由

ドンクベットが有効な理由として、ドローを狙うために小さくドックベットして安い値段で見に行けるようにした。相手に引かれないためにドンクベットをした。相手を牽制したくてドンクベットをした。というのをよく見かけますがこれらの理由は全て間違っています

そもそもGTOと呼ばれるものは、レンジ対レンジで戦略が決まります。よくある意見として「このハンドはフラッシュドローで相手に大きいベットをされたくないから小さいドンクベットをして牽制する」といったものがありますが、もしかするとエクスプロイトとしてその戦略は正しいかもしれませんが、それが正しいかどうかは相手の戦略を完璧に把握しないと分かりません。

GTO戦略でドンクベットが有効な時は、エクイティが近く、ナッツアドバンテージがある(または同程度)時です。ほとんどのボードではプリフロップのレイザー側に有利であるためドンクベットが使えるスポットは稀です。

そのため、GTO戦略でドンクベットが適切か?という問題に対してはほとんどのスポットで「適切ではない」となります。

次に数少ないドンクベットが有効なスポットでよく起こる間違いについて紹介していきます。

強いハンドに偏ってしまう

初心者でよくあるのは、ドンクベットレンジが強いハンドに偏っていることです。例えば、100bbのキャッシュゲームでUTG vs BBのSRPで、フロップが765の際、エクイティの高いハンドに偏ってドンクベットしていることが挙げられます。

GTO戦略
初心者のよくある戦略

こういったレンジでドンクベットをしてしまうと、相手にエクスプロイトされてしまいます。事前に相手はどんなハンドでもドンクベットにコールし、ターン、リバーも多くコールしてくるような相手だとわかっていればこの戦略でも良いかもしれませんが、そうではない時では、ドンクベットしたときは降りられてしまい、チェックした時はベットされて降ろされてしまい、エクスプロイトされてしまうでしょう。

大きなサイズでドンクベットしてしまう

ドンクベットが有効とされるボードでも、BBのエクイティは不利であり、ナッツアドバンテージがあったとしてもごく僅かです。そのような場合では大きなベットサイズは使われにくくなります。

例えばドンクベットが有効な765のフロップでもBBはナッツアドバンテージを獲得しているもののごくわずかです。

大きなサイズがよく使われるBTN vs BBのAJTのフロップと比較してみます。

100bb, UTG vs BB, 765r
100bb, BTN vs BB, AJTr

みてわかる通り、右の状況ではエクイティにかなりの差があることがわかります。つまり、あまりエクイティに差がないような状況では大きなサイズは使われにくく、大きなサイズを使ったとしてもその後の戦略で不利になってしまうでしょう。

ドンクベットが有効な時

まず、最初にドンクベットが使える状況を2つ紹介します。100bb持ちのキャッシュゲームで、プリフロップでUTGがオープンし、BBがコール。フロップが765。

この時なんとBBはレンジのうち55%でドンクベットをします。(赤く塗られている部分)

もう1つ例を紹介します。40bb持ちのキャッシュゲームで、プリフロップでUTGがオープンし、BBがコール。フロップが654。

先ほどより多いレンジのうち63.9%でドンクベットをします。

なぜここまで多くドンクベットするのでしょうか?

ドンクベットする要因として、①両者のオープンレンジの差、②エクイティが近い、③ナッツアドバンテージの3つが挙げられます。

まず、レンジ差を見てみます。

UTGのオープンレンジ(100bb)
BBのコールレンジ(100bb)

UTGはA〜Tの組み合わせで出来ているハンドがほとんどです。それに対し、BBは最も強いハンド(AAやKK)を除いて多くのハンドがあります。

先ほど紹介したボードが765のボードでのエクイティ分布をみると、水色の線のBBのエクイティが右上の方で上回っていることがわかります。

つまりBBにナッツアドバンテージがあることが分かります。さらに、ここでのエクイティは両者近く、UTGが51.2%、BBが48.8%です。平均では、UTGが59.5%、BBが40.5%であることを考えるとかなりBBがエクイティを持っていると言えます。

765や654のような低い数字が連続したフロップではBBはUTGより多くの強いハンドを持ち、エクイティも近くなります。このようなフロップではドンクベットを多くすることができます。

ハイカード別にドンクベットがあるかどうか確認してみると、4~9といった数字がハイカードの時にドンクベットが行われています。

ボードがどれくらい繋がっているかどうかどうかで見てみると、

Disconnected=あまり繋がっていない、AK4など。OESD possible= OESDが作れる、K64など。Connected=ストレートが作れる、689など。

圧倒的にストレートができるボード(Connected)が多いことがわかります。つまり、ランクの低い数字(4~8辺り)かつストレートができるボードではBBはドンクベットをする傾向があると言えます。

ドンクベットのレンジ構成

ドンクベットが有効な時についてわかったところでドンクベットをする際のレンジ構成についてみていきます。

ドンクベットのレンジは様々なハンドで構成されています。むしろ全てのハンドでドンクベットは行われており、頻度に差があるだけです。

どういったハンドが多いのかドロー別、エクイティ別にみてみます。

ドローがあればあるほどドンクベット頻度は上がり、エクイティがあればあるほどドンクベット頻度が上がるという当たり前のことしかわかりません。そのため先ほどのレンジに戻ってみていくと、AK、AQ、AJ、KQなどのハンドはドンクベット頻度が少なくなっています。反対に9や8があるハンドは頻度が高くなっています。

なぜなのかUTGのコールレンジも確認してみます。UTGはレンジの内、20%をフォールド(水色に塗られいる部分)しており、KQやKJなど単にエクイティの低く、強いハンドになる可能性が低いハンドからフォールドしていることがわかります。

33%ポットサイズのドンクベットをされた際のUTGのアクションレンジ

つまり、BBはAKやAQでベットしてUTGをフォールドさせても、それらのハンドに対しては多くのエクイティを持っておりあまりフォールドエクイティが得られないことがわかります。

反対にA9やK9、A8やK8はドミネイトされているハンドをフォールドさせることができ、大きなフォールドエクイティを得ることができます。

このようにUTGのレンジによってBBのドンクベットレンジは決まっています。チェックよりもベットしたほうが得なハンドは多くベットし、バランスを取れるようにそれらに重みづけをしていきます。

ドンクベットへの対策

ディフェンスする側は基本的に、相手のブラフのEVが0になるようにします。ポーカーではポジション、レンジの相互作用、後のストリートの数によってどれくらいディフェンスするかは変わります。

たとえMDFのような値を使ったとしてもそれらの変数があるため正確にレンジの⚪︎%で守ればいいというのは難しいです。そのためどれくらい相手のベットに対して守れば良いかは実際にGTO WizardなどのGTOソフトを使用して確認するのが良いです。

先ほどの765のボードで33%ポットサイズのドンクベットをされた際のコールとフォールドになっている境界線を見てみると、AJoやATo、AJsなどがなっていることがわかります。

スート系のハンドは、バックドアフラッシュがないハンドが境界線になっています。オフスートは相手のブラフハンドを抑えていないJを持っているとコール頻度は上がっているものの混合戦略となっています。

どのようにディフェンスすれば良いのかわからない時は、MDFを参考にするのも良いですが(今回の場合80%なのでGTO戦略とほぼ同じ)実際にGTO戦略を確認してみることをおすすめします。

まとめ

ドンクベットは長らく初心者が行うアクションの1つだとされていましたが、有効な場面は存在します。しかし、どの場面が有効なのか、ブラフとバリューをどう混ぜるべきなのか判断することは非常に難しいです。

ドンクベットについて深く研究したい方はGTO WizardのようなGTOツールを使うことをおすすめします。様々なスポットを研究することでドンクベットの傾向がはっきりと見えてくると思います。