ドンクベット戦略は有効なのか?対策方法も紹介
2021年11月23日
ドンクベットは長らくの間、弱いプレイヤーが行う典型的なアクションだとされてきました。それは、ドンクベットがdonkey(馬鹿な)という名前から由来していることからもわかると思います。
しかし、現代ではポーカーの発展によりドンクベットが有効な場面を見つけられ、トッププロはドンクベットを有効に使用し、期待値を上げています。
今回はそのドンクベットについてダメな理由と有効な場面、対策方法について解説します。
ドンクベットをしてはいけない理由に、①前のラウンドでコールをして消極的なアクションなのに強さを示すベットをするのは意味が分からない、②ハンドが微妙な時はチップを失いやすいなどがありまあすが、これらの理由は全てドンクベットがいけない理由を示しておりません。
消極的なアクションを示した後にドンクベットが有効な場面は存在し、またキッカーが弱いトップペアでドンクベットをすることもあります。
ドンクベットの本質的な問題は、①レンジアドバンテージがない、②バランスを取れていない、②ボードが適切でないことです。
そこでまず初めにドンクベットでバランスを取れていない3つの例を紹介します。
ドンクベットはレンジアドバンテージがない時には行うべきではないです。そもそもレンジアドバンテージとはどういうものでしょうか?例えば、以下の2つのレンジを見比べてみてどちらのレンジが有利に見えるでしょうか?
レンジ①(UTGのオープンレンジ)
レンジ②(BBのUTGに対するコールレンジ)
おそらく誰でも①の方が有利に見えるでしょう。最強ハンドであるAAやKK、QQは①には含まれていますが、②には含まれていません。それに加え、①で一番弱いハンドはK5sであるのに対し、②で一番弱いハンドは52sや42sまであります。
このレンジの強さの違いがレンジアドバンテージと言います。これだけなら誰でもわかりますが、ボードが絡むことがポーカーの厄介なところです。例えば、ボードがAQ4だったら①と②どちらにレンジアドバンテージがあるでしょうか?
答えは、①です。エクイティの分布図を見てみると、全体で①が勝っていることがわかるでしょう。セット、ツーペア、トップペアといった強いハンドは①に圧倒的に多く含まれています。
そのため、このフロップが開かれてた状態では引き続き①がレンジアドバンテージがあると言えます。相手に多くのレンジアドバンテージがある状態ではドンクベットを行ったとしてもレイズやコールをされ上手くいきません。
レンジアドバンテージが相手にある場合はドンクベットをしても効果的ではないでしょう。
ドンクベットを行うとチェックレンジが弱くなってしまいます。下記の例を見てみましょう。
ここで全てのトップペアでドンクベットを行ったらどうなるでしょうか?
ドンクベットを行わないチェックしたレンジには、トップペアを含まない弱いレンジで構成されており、相手はc-betの頻度を高くしたり、コールされてもターンで大きなベットを行うことでエクスプロイトをすることが出来ます。
ドンクベットを行うことでチェックレンジを弱くしてしまうと、容易にエクスプロイトされてしまいます。逆にドンクベットを使用してくるプレイヤーを見つけたらエクスプロイトしていきましょう!
ドンクベットを正しく行えば、利益的なプレイになります。しかし正しく行うためには、ベットサイズ、バリューとブラフの比率をそろえなければなりません。それに加え、ドンクベットを選択肢に入れて変わるEVはごくわずかです。
それよりも正しく行えないことで、失うEVの方が多いことがほとんどです。
そのため、ドンクベットを行えるようなハンドでもチェックレイズにした方が利益的なプレイになることが多くあります。
また、少しポーカーが打てるようになった人に良くある特徴として①c-betの頻度が高い、②ベットフォールド(ベットして、レイズされたらフォールドすること)の頻度が高いことがあります。
そのようなプレイヤーにはドンクベットを行うより、チェックレイズを行った方がより多くのチップを獲得できるため利益的なプレイになります。
ドンクベットの戦略は難しいですが、トッププロのわずかなEVの差を競い合っている世界では有効な戦略の1つとされています。
ドンクベットが有効な場面はレンジアドバンテージが均衡している時とナッツアドバンテージがある時です。
例を見てみましょう。プリフロップでMPがオープンしBBがコールしました。
867ボードでは、コールした側にセットやストレート、ツーペアが多く含まれています。
PreflopAdivisorのレンジを基に計算してみると、コールした側にはツーペア以上が11.1%、それに対してレイズした側は6.8%しかありません。また、オープンエンドストレートドローやガットショットなどはコールした側に多く含まれており、強いハンドがより多く含まれているボードと言えます。
そのようなときは、ドンクベットが有効な場面です。
実際にGTOを見てみると、レンジ全体でドンクベットを行うことが出来ます。
※青が33%ポットベット
またドンクベットは自分のEVを上げるだけでなく、相手のミスを誘発することが出来ます。例えば、先ほどのシチュエーションでドンクベットに対してレンジの何%をディフェンス(コールorレイズ)するでしょうか?
GTOによると、レンジの76.3%でディフェンスしています。
※青が60%ポットレイズ、緑がコール、赤がフォールド
ドンクベットをされた時に、QTでコールしたり出来るでしょうか?おそらく多くのプレイヤーはドンクベットをされた時に多くフォールドしてしまいます。
ドンクベットは自分のEVを上げるだけでなく、相手のミスを誘発させることが出来るため有効な戦略の1つです。
先ほどドンクベットが有効な場面として、①レンジアドバンテージが均衡している時、②ナッツアドバンテージがある時と言いましたが、もっと簡単な見つけ方もあります。これは、BBで相手のレイズに対してコールした時限定なのですが、ハイカードが5、6、7辺りでストレートが作りやすいボードではドンクベットが考慮できます。
457や345などがそれにあたります。
実際にUTGオープン、BBコールの集合分析を見てみると、ハイカードが567では赤い割合が多くなっており、ドンクベットの頻度が高くなっています。
BBでコールした時にボードがストレートを作りやすいかつハイカードの数字が低い場合はドンクベットを検討してみましょう。
では、実際にドンクベットをされたらどうするべきでしょうか?理論的には、相手に無差別にブラフをさせないようにします。
例を見てみましょう。
$6.5のポットに$2.17(33%)のドンクベットを打ってきました。その場合Player8はどれくらいのレンジでディフェンスすべきでしょうか?
相手は、$6.5のポットを勝ち取るために$2.17ベットしているため、25%以上成功すればどんなハンドでも行った方がよくなります。
※ベット額/ベット額+ポット額 $2.17/$2.17+$6.5=25%
それを防ぐため、Player8はレンジの75%以上でディフェンスしなければいけません。実際にはポジションの有利があるためもう少し多い数字でディフェンスすることが出来ます。
しかし、この数字は対戦相手によって変化します。例えば対戦相手がバリューでのドンクベットしか打たなかったらどうでしょうか?その場合はディフェンスする頻度は少なくすることでより多く勝てるようになります。
ドンクベットヘの対策は、まずは理論上必要な頻度でディフェンスをし、対戦相手によってその頻度を変えていくのが良いです。
ドンクベットは長らく初心者が行うアクションの1つだとされていましたが、有効な場面は存在します。しかし、どの場面が有効なのか、ブラフとバリューをどう混ぜるべきなのか判断することは非常に難しいです。
ドンクベットを行うことは自分にとって利益的なのか、しっかりと考慮したうえでドンクベットを行うようにしましょう。