「理論を信じることが成長には不可欠」Amuに教わるポーカーの上達方法

【Amu】東京大学理学部数学科卒業。noteでポーカーの様々な理論を発信し、近年のポーカーの発展に大きく貢献。

ポーカープレイヤーインタビュー企画第8弾。今回登場するのはAmuさんです。ポーカーが上手くなるための秘訣をたくさんお聞きしました。

ポーカーと出会ったきっかけについて教えてください

大学の頃にダーツサークルを運営していて、そこの後輩に「ポーカー得意そうだからやってみたら?」と言われて初めてテキサスホールデムをやりました。

その時はストレートを見逃すくらいだったのですが、少し前に東京に引っ越しをして、家の近くにポーカールームがあったので頻繁に通うようになり本格的にポーカーを始めました。

週1以上のペースで通い始めてからは1年半~2年くらいですね。勉強をし始めてからは1年くらいです。

Amuさんの当時の勉強方法について教えてください

YouTubeの動画をメインで見ていました。ショートさんやポーカーの沼チャンネルといった座学寄りのことをまとめたものやゆっくり実況解説のようなものなど端から端まで漁っていましたね。あと、note関連の記事を少しずつ見るようになって、その後にWizardで勉強し始めました。

悪い情報を無理に排除する必要はないと思っています。もともと私は理論寄りの人ではあるので、良し悪しの判断は比較的自分でつく方でした。とりあえず片っ端から情報を入れて、悪いと思ったら自分のものにしなかったです。理論的に合っているか間違っているかは分かるので間違っていることを言っている箇所は無視をするというスタイルで勉強していました。

基本的には、プレイした全てのハンドをレビューしていました。そのハンドレビューというのは世間一般に言うような価値の高いハンドレビューではなく、今打ったラインがよく打たれているラインなのかというのを見るだけのハンドレビューでした。

そもそもアミューズメントで打っていたことが多く、携帯を触って調べる時間がいくらでもあったのでそこで調べていました。PCを新調した後は完全に座学だけの時間を作って集合分析を眺めたり、簡易戦略というと世間一般に言われる簡易戦略とは違うのですが、簡易的に覚えやすくした戦略に落とし込んで勉強をしていました。

例えばBTNとBBのSRPでK9LというボードとKTLというボードがあった時に、もちろんWizardを見たら片方のポットオーバーのベット頻度は10%で片方のポットオーバーのベット頻度は12%という細かい差異があります。

それを実践で再現できる必要はなくて、あくまで覚えやすい形で大まかに外していない打ち方というのさえ再現できればよいと思います。

世間一般に言われている簡易戦略ではベッドサイズのインプットをそもそも絞ってPioSOLVERを回す、もしくはPioSOLVERで集合分析を回すというのがメインだと思うのですが、そうではなくWizardを使って特徴的な量で分類をしていくというような作業を1750通り以上のフロップを4通りや5通りに分けたりという人間が覚えやすい形で分類をするという簡易化をしていました。

もちろんWizardのフィルター機能も使用しますがそれとは別に、例えばBBの3BPなどポジションによってレンジの形が大きく変わるシチュエーションに関してはWizardの集合分析を見ているだけではかなり厳しいものがあるので、知り合いの方でパイニャンさんという方がいらっしゃるんですけど、色々ツールを開発していただいたりして自分のまとめ方が正しいのかを検証しながらまとめるという作業もしています。

ルールを覚えたばかりの初心者はどう勉強したらよいですか

あくまで勉強する覚悟がある人間を対象に話しますが、

①何らかのソルバー(PioSOLVER、Monker、GTO+など)ないしPreslolved strategy(GTO Wizardなど)の中でどれをベースに勉強するのかをまず一個決めます。決めたら、その決めたソフトを使いながらプレイを追ってみる。要は非常にレベルの低い状態でのハンドレビューです。

自分のラインがGTO的なラインだったのか、プリフロップのハンドが合ってましたかという低次元での話です。

②次は非常に基礎的な理論の部分を勉強するべきだと思います。例えばAKQゲームやバリューとブラフというのがどういうものなのか、理論的な話の部分です。

③その後は非常に基礎的な暗記をおすすめします。プリフロップの暗記ないし戦略の簡単なもの、よく世間一般に言われているレベルの暗記をするべきだと思います。

④最後に実戦でのプレイと個別具体的なシチュエーションの座学と難しい理論の勉強の三本柱です。どれか1個を極めるというよりはバランスを取りながらやっていくことが大事だと思います。特にこの中で外せないのは個別具体的なシチュエーションや細かいところの暗記や振り返りで、そのためにはGTO Wizardやソルバーがあれば十分だと思います。

少し前にnoteでジオメトリックベッドサイズというものを出したのですが、中身を理解するにはかなり難しいものだと思います。

ジオメトリックサイズの内容はリバーでオールインを目指す時、同じポット%ベットを用いるとポラライズは最大の期待値を得るということなのですが、エクスプロイトの時にどうするのか、戦略のずれがある人に対しては前側のベッドサイズを大きくした方がよいのか、後ろ側のベッドサイズを大きくした方がよいのか、これにすぐさま答えることは非常に難しいです。

ジオメトリックベッドサイズの導出が自分でできる人であれば手を動かしてわかることですし、理論的な背景をしっかり学んでいるからエクスプロイトに寄せられるという部分が非常に多いです。

ただ難しい理論の理解と言っても脅し文句みたいなもので、高校生くらいの知識の内容しか基本使わないですね。

作ります。リバーのToy Gameのモデルを考えてプレイした方がよいというのは私はかなり前から言っていて、よく言われているのはAKQゲームと01ゲーム(KQ64)と呼ばれるものがあります。

他にはマルチストリートAKQゲームやジオミトリックベッドサイズの導出に使う複数のストリートにもまたがったモデル、あと私がこの前noteで出したWpolarがあります。

それ以外のToy Gameも作ろうと思えばいくらでも作れるのですが作ったものが有益か有益ではないかは非常に難しくてToy Gameの結果自体から得るものは基本ないのでToy Gameの結果を見て、そこからどのような背景知識や理論が出てくるのかを学ぶことが大事です。

結局、新しいToy Gameを多く作るよりも現状のToyGameのAKQや01でスタックがポットの2倍になった時やポットの3倍になった時、逆にショートになった時などを勉強する方がはるかに大事だと思います。

どういった適性があると上達が早くなりますか

まず絶対に欠かせないものが理論を信じられるということです。数学的に導かれたものを無条件に正しいと信じられることは、まともな教育を受けてきた人間であればそうだと思うのですが、実はかなり宗教的な話です。

理論を信じない立場ももちろん存在していて、私はこういう宗教を信じますというように無条件にその人が正しいと思うものが何かしら存在しています。その中に理論的なものが全て正しいという信念が1個あると思います。

ただ理論を信じられるということが座学で成長するために不可欠だと思っています。

なぜなら「GTOは意味がない、ポーカーはそういう理論ではなくその時にしかわからない感覚のようなものがある。」

このような話をするのであれば、私はそのプレイが正しいか正しくなかったのかというのは永久にわからないと思っていて、その人が信じるうちは正しくて信じられないうちは正しくないということです。

理論的でないものを1個でも認めると、理論というのがそこに採用できなくなるので、無条件に認めていくしかなくなってしまいます。1+1=10と言ったとしても許すしかなくなるので理論的に学ぶことが全てです、という立場があるのは必要不可欠です。

それとは別に理系であった方が好ましいゲームだと思っています。大学の数学レベルまでが必要とは一切思わないのですが、大学受験を数学でやっているかどうかですね。知り合いの中でも文系の方は苦しめられているようなシチュエーションをぼちぼち見ます。

ただどんな競技、どんなゲーム、どんな物事に対しても結局、才能とはそれにどれだけ時間を費やしても苦ではないというものだと思っているので、別に文系であってもポーカーが好きでポーカーに時間を費やせればそれを補うだけの才能があると思うのであまり関係はないと思います。

ポーカーの質問をされた際は何に気をつけて回答したらよいですか

自分が質問された時を想定して話しますが、基本的にはあまり答えないようにしてます。多くの人は議論をしたがるんですが、詰めた議論をしたいかというと、そうではなくて考えているという経験をしたいということが非常に多いです。

まず何らかの議論をする時は相手のモチベーションが異常に高いことを確認するべきです。基本的にはちゃんとやりたいのかと聞いてやりたいと返ってくるぐらいの人は、そんなにやりたくないことが多いので、ちゃんとやりたいのかと聞いた時に+αで返してくるような露骨にモチベーションがあるかどうかを確認した方がよいです。

だから、そもそも議論の土俵に立って話がこじれないのかというのを一番最初に確認した方がよいです。土台に乗って汚い議論ができますということであればポーカーに関して絞って言うと、まずは均衡上の話をしているのか、それともエクスプロイトの話をしているのか明確に分けるべきですね。

特に後者の場合は、今話している内容が過程部分の話か演繹部分の話どちらなのか明確に分けるという作業を毎回しっかりやった方がよいと思います。

今後ポーカー界とどう関わっていきたいですか

そもそもポーカー自体は趣味なので他のプロの方々とは違ってポーカー界で生計を成り立たせたり、ポーカーの世界を良くしていこうというモチベーションが強くあるわけではなくて、自分が楽しいからやっているというレベルの話です。

結構どんなゲームも2年くらいで飽きやすく、もう少ししたら飽きていなくなるかもしれないし、それはわからないです。その時その時でやりたいようにやって、ストレスが溜まるようであればフラッといなくなって別のゲームでもやろうかなという話なので趣味として現状はやっています。

ただ、幸いにも応援してくれる方が多いので、自己顕示欲というか褒められると人は嬉しくなりますから嬉しいなと思いながらやっています。