ポーカーにおけるICMってどういう意味?使い方を解説
2022年9月17日
ポーカーを上達させる上で数学的な考え方は避けては通れません。今回はポーカーのトーナメント戦略において、重要な概念の一つである、ICMについてご紹介します。
ICMはトーナメントにおける収益に対してダイレクトにかかわるコンセプトなため、理解し使うことができればあなたの勝率を上げることができます。
ICM(independent chip model)とはトーナメントにおけるスタックサイズの価値を示す指標です。ファイナルテーブルでのディールの多くはICMに基づいて分配されます。
ICMが必要になるのは、1位総取りでは無いSNGやトーナメントにおいて、賞金プールは比例しているわけではなく、上位になるに従って加速度的に増えていくためです。
例えばポーカースターズのSunday MIllionでは以下の割合で賞金が分配されます。
つまり、チップの価値にキャッシュゲームとトーナメントでは大きな違いがあります。例えば、もしあなたがキャッシュゲームで50ドル持っている場合、あなたのチップの価値は50ドルです。当たり前ですよね。しかしトーナメントでのチップの量を金額に紐づけるには複雑な計算が必要になります。
その計算に基づいたチップの価値をICMバリューと言います。
ICMはペイアウトストラクチャー(順位によってどのように賞金が分配されるか)とスタック量が分かれば計算することができます。しかし、これらの計算は実際のシチュエーションで暗算することは難しく、学習する際もICMIZERなどのツールををつかうことがほとんどであるため、読み飛ばしても問題ありません。
まずICMの計算を説明する前に、トーナメントにおけるチップと優勝勝率の関係について理解しておく必要があります。それは優勝勝率は残りのプレイヤーのチップ比と一致するという前提です。これは数学的に証明されています。
たとえば、3人のプレイヤーが残っており、それぞれのチップの比率が
だとしましょう。この場合それぞれの優勝勝率は
となります。
トーナメントのファイナルテーブルでボブとアリスがヘッズアップになっているとしましょう。スタックとペイアウトストラクチャーは以下に設定します。
ボブ:3000点
アリス:1000点
1位:70ドル
2位:30ドル
チップ比率に基づいてボブの優勝勝率は75%、アリスの優勝勝率25%になります。
ボブは1位を75%、2位を25%で獲得すると予想されるため、ICMバリューは
70ドル×0.75 + 30ドル×0.25 = 60ドルとなります。
同様にアリスは1位を25%、2位を75%でとるため、ICMバリューは
70ドル×0.25 + 30ドル×0.75 = 40ドルとなります。
このように、ICMバリューは優勝勝率とプライズストラクチャーによって計算することができますが、残りのプレイヤーが複数人になり、ペイアウトストラクチャーが複雑になればなるほど、場合分けが必要になり計算も難しくなります。
ICMはICM calculatorというサイトで計算できます。2~15人まで人数を選択でき、ペイアウトストラクチャーとそれぞれのチップ量を設定することでICMを計算してくれます。
また、ICMを利用したプッシュオアフォールドのレンジを知りたい場合には、ICMIZERというツールがおすすめです。
ICMをイメージするためにわかりやすい具体例を見てみましょう。
9人のSNGで残り4人、それぞれチップを1000点ずつもっており、1位が50ドル、2位が30ドル、3位が20ドル、4位は賞金なしという状況でBTNからオールインが入り、あなたはBBでQQをもっているとしましょう。
前提条件としてあなたは相手のハンドがAKoであることをなぜか知っています。(実際のシチュエーションでは相手のハンドはわからないですが、わかりやすくするため)さてあなたはこれにコールするべきでしょうか?
現状、すべてのプレイヤーのチップの量は同じであるためICMバリューはプライズプールを4人で割った25ドルとなります。これはそれぞれのプレイヤーが1位、2位、3位になる確率が同じであるためです。
しかし、それぞれのチップの量が変わった場合、チップの価値は複雑になります。
オールインにコールしあなたかBTNどちらか一人が脱落し、どちらかがのスタックが2倍になったシチュエーションを見てみましょう。
一人がダブルアップし2000点となりました。この場合ダブルアップしたプレイヤーのチップの価値は、単純に25×2=50 とはなりません。38.33ドルとなります。
全体のチップの50%を所持していますが、チップの価値はプライズの38.33%となります。
AKoに対するQQの勝率は約57%です。もしこれがキャッシュゲームであれば悩むことなくコールするべきですが、このようなトーナメントのバブルではよりタイトにプレイする必要があります。
今回のケースだと、オッズは38.33/25 = 1.52倍であるため、必要勝率は100/1.52×100 = 66.8%と言う計算になります。
そのためフォールドが正解となります。
このようにICMを利用し、スタックの価値を正確に理解することで正しいプレイが可能になります。
ここまでICMの利点についてお伝えしてきましたが、ICMは万能な指標ではありません。ICMを上手に使うにはICMができないことも理解しておく必要があるでしょう。
ICMはあくまで現時点でのチップの価値のみを表しています。チップを獲得し、スタックが増えるとショートスタックに対してプレッシャーを掛けることができるため、有利に立ち回ることができます。
そのため、ICMバリューはショートスタックのプレイヤーにやや有利な値になります。
相手よりも自分がスキルが明らかに上であるようなシチュエーションでは、ICMに従うことは必ずしも正しいプレイではありません。バブルでは先ほどの例で説明したように、タイトにパッシブにプレイする必要があります。
そのため、あなたのスタックが深い場合には、広いレンジでオープンレイズすることができます。しかし、ショートスタックのプレイヤーがICMを理解しておらず通常通りリレイズオールインを返す場合、ICMを考慮せず通常通りプレイするほうがよいでしょう。
ここまでICMについて説明してきましたが、難しいと感じた人も多いと思います。実際に、ICMを自分のプレイに落とし込むには、勉強や訓練が必要です。まずは以下の要点抑えるところから始めましょう。
この3つを覚えておくだけでも、トーナメントに非常に役立つ知識となります。
余裕がでてきたら、自分のハンド履歴から、ICMを使った場合と使わない場合でどのくらいの差があるのか計算してみるのもよいでしょう。