昨今、オンラインカジノや国内大会等の規制強化により、オンラインカジノの決済代行業者だけでなく、ユーザーも単純賭博容疑で逮捕されています。安心してポーカーを楽しむためにはどうしたらよいのでしょう。そこで今回は、原弁護士に「日本のポーカー界に渦巻く闇について」お話を伺いました。
日本におけるポーカーの違法性
–まずはそもそもポーカーにおける賭博とは何かについて簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか?
「賭博」というのは、「偶然の勝敗に関して財物を賭けてその得喪を争うこと」(東京高等裁判所判決平成18年11月28日高等裁判所刑事裁判速報集平成18年231頁)をいうとされています。
ポーカーは、確かに実力の差が勝敗に影響し得ますが、未経験者でも当初配られたカードで既に高い手役が揃っていれば、経験者が逆転できないこともあるでしょう。したがって、「偶然の勝敗に関して」に当たることは明らかです。
そうしますと、問題は、「財物を賭けてその得喪を争うこと」に当たるかどうか、ということになります。
当然のことながら、単に参加者が参加費を払って、プレイするだけであれば「財物を賭けて」いないため、「賭博」に当たりません。もちろん、海外のキャッシュゲームのように換金できるチップを使用してポーカーをすれば「賭博」にあたります。
国内大型トーナメントの違法性について
–次に、Twitter上で度々問題になる国内の大型トーナメントの違法性についてお聞きしたいです。
優勝者に優勝賞品や賞金が支給されるような、賞品・賞金付きのトーナメントは度々問題になりますが、日本には、優勝賞品や賞金付きの大会は、将棋大会・麻雀大会・ゴルフ大会など無数にあります。
たとえば10人の参加者が参加費として1000円を支払い、総額1万円の参加費のうち、場所代等の費用に5000円、残りの5000円を優勝者に優勝賞金として支給する場合、参加者は、参加費という(場所代等の費用を除く500円分の)賭け金を負担して、賞金5000円のために、「その得喪を争う」形式となります。
よって、このような場合は、「賭博罪が成立」します。また運営側には、そのような場を設けることで、賭博場開帳等図利罪が成立します。
他方で、総額1万円の参加費はすべて場所代等の費用に充て、賞金については、スポンサーから別途支給されるという形式を取ると、各参加者は、あくまで費用を負担しているに過ぎないため、上記のような賭け金はありません。そうしますと、賭け金の得喪を争うという関係になく、「賭博」に当たらないといえるでしょう。
もし本当に国内のポーカー大会が、あくまで参加費は場所代等の費用に充て、スポンサーからの支援を海外渡航費や海外の大会の参加費に本当に使用するのであれば、上記の論理から、「賭博」には当たりません。
逆に、徴収した参加費から海外渡航費や海外の大会の参加費を支出していると、「選手契約」の締結という手続を挟んだところで、このような特権のために賭け金を賭けて争っている、すなわち「賭博」に当たると判断されるリスクがあります。特に、徴収された参加費が店舗で利用できるコインやその運営費、オンラインカジノの原資となっていれば、別会社を挟んだところで、賭け金の得喪を争っていることになり、「賭博」に当たると判断されるリスクが高いでしょう。
アミューズメントカジノの違法性について
先述の通り、アミューズメントポーカーではチップの現金化を認めると、上記のような賭博に当たり、認められていません。
このような店舗を運営する場合、賭博罪の問題以外に、いわゆる風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号))上の問題が生じます。
アミューズメントカジノを運営するには、各都道府県警による風営法3条1項に基づく風俗営業許可を受けなければならないと考えられています。これは、アミューズメントカジノの運営が、風俗営業(風営法2条1項5号)に当たるとされるからです。なお、都道府県によっては、風営法2条1項1号にも該当するという運用を取っていることもあります。
そして、アミューズメントカジノの風営法上の一般的な分類である風営法2条1項5号については、これを営む者は、「その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」(風営法23条2項)とされています。
いわゆるクレーンゲームについては警察庁の通達により一定の例外が認められていますが、そうでない場合、たとえばアミューズメントカジノの店舗において、Apple Watchやドリンクチケットなどの商品を景品として配布することは、風営法違反となります。
アミューズメントカジノにおいて、優勝者等に国内の賞金付きトーナメント大会のチケットを配布することも、そのようなチケットが「賞品」に該当する限り、風営法違反となります。「チケット」が「賞品」に当たるかどうかですが、少なくとも、そのチケットがなければトーナメント大会に出場するには別途出場料が発生するといった場合には、「賞品」に当たると判断されるリスクが高いでしょう。
オンラインカジノの違法性について
–では次に、昨今問題となっているオンラインカジノを巡る違法性の問題について、お伺いできますでしょうか?
日本国内からオンラインカジノサイトにアクセスして賭け金を賭けてオンラインカジノをプレイすることは、「偶然の勝敗に関して財物を賭けてその得喪を争うこと」に当たります。海外で合法的に運営されているオンラインカジノであったとしても、プレイヤーは、日本国内からアクセスして、日本国内で賭博行為を行っていますので、日本の刑法上、賭博罪が成立します。
この点、賭博罪と賭博場開帳等図利罪の関係に着目し、より罪責の重い後者について日本刑法を適用して処罰できない以上は、前者については違法性を阻却すべきとの解釈(https://ameblo.jp/gamblelaw/entry-12235518621.html)もあり得ますが、あくまでもひとつの法律解釈に過ぎず、確立した判例法理があるわけではありません。少なくとも上記のように「賭博罪」の成立要件としての賭博行為を行ってしまっている以上、逮捕されたり起訴されたりするリスクがあります。
警視庁は「日本国内ではオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪です!(引用:警察庁)」と明確に公表しており、検挙数まで公表する姿勢を見せています。少なくとも警察当局は、上記解釈を採用していません。
–では、海外で合法的に運営されているオンラインカジノのアフィリエイトを、日本の事業者が行うことは、賭博開帳等図利罪や、単純・常習賭博罪の幇助に当たるのでしょうか?
賭博開帳等図利罪の幇助については、まず前提として、オンラインカジノが海外のサイトであり海外では処罰されないとしても、そのことのみを理由として、日本における幇助行為が不可罰となるわけではありません。
オンラインカジノから見返りを貰って、日本のユーザー向けにオンラインカジノに誘導するwebページを公開するなどの行為は、賭博開帳等図利罪の幇助として摘発されるリスクのある行為と考えられます。
次に、単純・常習賭博罪の幇助については、アフィリエイターとユーザーとの間の繋がりが薄いことから、一般論として、幇助は成立しにくいと考えられます。
ただし、日本人ユーザーがオンラインカジノを利用することを誘導するようなwebページの場合、ユーザーによる賭博行為を容易にしたとして、摘発されるリスクがないわけではありません。
同様にポーカーのプロモーションをするいわゆるポーカーインフルエンサーについても、オンラインカジノのプロモーションをしているような場合は、違法と判断されるリスクがあります。
そのほかの問題として、オンラインカジノの決済代行を日本国内の事業者が行うことにも違法性の問題があります。
日本国内からオンラインカジノにアクセスしてプレイすることは、上記のとおり、単純賭博罪又は常習賭博罪が成立し得ますので、結論として、決済代行業者については、その幇助罪が成立する可能性が高いと考えられるでしょう。
決済代行により、プレイヤーは賭け金を入金したり、獲得利益を出金したりすることが容易になるためです。
現に、2023年及び2024年になり、オンラインカジノの決済代行業者が常習賭博幇助罪等で逮捕されたといった報道もされています。
また、決済代行業者は、その決済手段との関係で、決済サービスの利用規約違反となったり、詐欺罪が成立したりする危険性も考えられるでしょう。
まとめ
アミューズメントポーカーは、国内トーナメント大会の形式で大会を開催したとしても、それだけで、ただちに参加者に賭博罪が成立したり、主催者に賭博場開帳等図利罪が成立したりするわけではありません。しかし、参加費と賞品・賞金との関係によっては、賭博に当たります。
アミューズメントカジノについても同様ですが、アミューズメントカジノでの景品等の配布は、風営法違反の可能性が高くなると考えられるでしょう。
このほか、オンラインカジノは、海外で合法的に運営されているものであっても、日本国内からアクセスしてプレイすれば単純賭博罪・常習賭博罪が成立する可能性があり、アフィリエイターや決済代行として関与することも違法とされる危険性があります。
どのような場合に違法とされやすいのか、リスクを踏まえて慎重に行動することが重要になるでしょう。